empirestate’s blog

主に政治…というよりは政治「思想」について書いています。

日本では男性が差別されているという言説

たまに、「日本は男尊女卑ではなくむしろ女尊男卑であり、女性が優遇されていて男性は差別されている」というようなことが言われることがあります。

しかし、2017年に出された自殺対策白書では、日本の自殺率は世界でワースト6位だが、女性の自殺率はワースト3位だとされています。(自殺率が把握できた約90カ国の中から、割合の高い20カ国を選んだ中での順位。自殺率自体は過去より下がっている)
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また2016年に出された男女平等、不平等を表すジェンダー・ギャップ指数では、日本は144カ国中111位です。(伝統的に男尊女卑と思われる中国よりも低い。とはいえ、別の「ジェンダー不平等指数」では2014年で155カ国中26位だと述べられています)
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そんなわけで、日本が女尊男卑であり、女性が優遇されており男性が差別されているという言説は当たらないと思われます。

とはいえ私自身、昔は「日本は女尊男卑だ」と思っていたことがありました。しかし考えてみると、「女性が差別されている」ということについては、男性と同じ仕事をしていても給料が安いとか、重要な役職につけないとか、セクハラされるとか、出産育児で休暇が取れないとか、共働きでも女性ばかり家事育児を任されるとかいう具体的な内容が伴っています。
これに対して、「男性が差別されている」ということについては、「これこれこういう事象があるから差別だ」という具体的な内容がほとんど思い当たらないということに気づいたのでした。(痴漢冤罪で捕まるとかは聞きましたが)

要するに、この「男性差別」というのは、客観的な事実というよりは、「差別されているという意識」であるように思われます。

とはいえ、だからこの「男性差別」などというのは単なる思い込みであり、たわごとに過ぎない、とは言えないだろうと思います。
と言うのは、つまりそれはこの世の中が(女性と比べてどうかはともかく)「男性にとってもまた」生きにくい世の中だと感じられているということであろうからです。
(よく理不尽に行われた事柄について、「そうしなければならない空気があった」とか言われますが、このようにはっきり制度としては決まっていなくても圧力としては確かに存在する、ということはあると思います。思うにこれは公式な決まりではなくても、人々の意識から直接加えられる圧力であって、人的な強制力というものなのでしょう)
そしてまたこのように、「自分が生きにくいのは女性が優遇されているからだ」というように、意識を他への対立に結びつけるような力学が働いているということがまた、生きにくさの一因であるようにも思えます。そしてまたこのような状況は、一般的な男女の他のLGBTなどにとっても好ましからざるものであろうと思います。

どこかのフェミニストらしき人も言っていましたが、思うに男女平等というものはただ単に女性を救済するものではなく、男性をもまた救済するものでなくてはならないのでしょう。
要するに月並みな言い方ではありますが、相互を尊重するものでなければならない、ということだと思います。

私が思うに、このような生きにくさの一因は、男女ともに「男らしさ」「女らしさ」というものが過度に、あるいは理不尽な仕方で求められ、それから外れる者は「駄目な奴だ」とみなされることから来ているように思われます。
もちろんそのような「らしさ」という社会的規範はどんな社会にもあるでしょうし、またそれはある程度必要なものでもあるでしょう。
しかし、共働きなのに女性ばかりが家事育児をやらされるというような場合は、それは理不尽だと言えるでしょう。(余談ですが、飲み会に連れて行かれて酒を飲むことを強要されるのも理不尽な圧力だと思います)