empirestate’s blog

主に政治…というよりは政治「思想」について書いています。あと読書感想文とか。

日本と儒教

 日本は評価する人によって、儒教圏に含まれることもあれば含まれないこともありますが、含まれない場合には、日本は独自の文化圏だとか、儒教圏は上下関係で成り立っているけど、日本は「和」の国なんだとか言われることがあります。

 私としては、日本は儒教圏に含めてもいいと思います。

 これに対しては、日本にはまとまった宗教としての儒教はほとんど存在していないという反論があるかもしれません。
 しかし、外務省や旅行会社のホームページなどを見ると、一般に儒教圏に含まれる韓国でも、宗教としての儒教の信者は人口の1%にも満たないもので、大方は仏教とキリスト教になっています。それでも文化的には儒教の影響が大きく、広く受け入れられているといいます。

 これはベトナムも同じであって、大方はやはり仏教と、次いでキリスト教(カトリック)であって、儒教は統計には名前も出ていないので、宗教としての儒教の徒はいたとしてもかなり少ないと思われます。しかし、文化的にはやはり儒教の影響が広く行き渡っており、カトリック教徒であっても儒教的な祖先に対する祭祀が行われているともいわれます。(カトリック教徒なのに祖先祭祀というのは奇妙に思われるかもしれませんが、かつて中国にカトリックの宣教師が訪れた時、中国人の祖先祭祀は実際には宗教ではなく、単に祖先に対する敬意を表するものだとしてこれを認め、また典礼で中国語を使うことを認める(当時は基本的にラテン語でなければならなかった)ことがあり、一方でこれを認めない派閥と論争になったことがあるので、ベトナムの状況もこれに似ていると思われる)

 また儒教発祥の地である中国でも、儒教は統計にも名前が上がっていませんし、明代に中国を訪れたカトリック宣教師も、儒教は官僚のためのもので、民衆はもっぱら道教と仏教によっている、と述べています。

 そんなわけで、儒教圏というのは儒教が宗教として受け入れられていなければならないわけではなく、儒教の影響が強く、儒教的価値観が受け入れられている地域をこういうのだと言うべきでしょう。

 日本についていえば、その独自性の根拠として神道が挙げられることがありますが、神道は自然の神々と共に自らの祖先と、過去の偉人とみなされた人々(菅原道真など)をまつるものであって、これは儒教のもとになった中国の神祇信仰と基本的に同じような内容です。つまり、文化の基層からして似かよっていると言えます。
 神社本庁も言っていますが、古代の日本には祖先を同じくする血縁集団としての氏(うじ)(氏族)があり、その氏がまつる神が氏神(うじがみ)であって、それはその氏族の祖神や、氏族に関わりの深い神(軍事を生業にする氏族なら軍神をまつるなど)であるわけです。そして天照大神もまた皇室の氏神であるわけです。

 記紀では儒教経典は応神天皇のときに伝わったとされており、仏教よりかなり早く伝わっています。しかも仏教とは違ってこれを受け入れるかどうかで争いになったとも言われていませんし、仏教のように後で神道から分離されたわけでもありません。
 明治維新のあとも神道儒教的価値観が共存していたことは、教育勅語軍人勅諭の内容からわかります。儒教や仏教を外国からの影響で不純物とみなしていた本居宣長平田篤胤も、儒教の祖である孔子本人については好意的に語っています。つまり、神道は仏教よりも儒教のほうに親和的であるわけです。

 そんなわけで、日本は儒教圏に含めていいものと思いますし、儒教圏とはやはり文化が似ていると思います。もっとも、それだけに悪いところも似ているように思えますが。