今回も読書感想文を書いていきます。また少女漫画ですが、今回はこれです。
嘘解きレトリック(全10巻)
- 作者: 都戸利津
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2013/06/20
- メディア: コミック
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- 作者: 都戸利津
- 出版社/メーカー: 白泉社
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舞台は昭和初年の日本。(昭和初年とは、「昭和元年」のことではなく、昭和の最初の数年間のことらしい)
主人公の浦部鹿乃子(うらべかのこ)は、人が嘘をつくとその「音」が聞こえる(つまり、その人が嘘をついていることが分かる)特殊な力を持っています。
この力のために周囲から疎まれ、郷里を出て九十九屋町(つくもやちょう)という街にやってきた鹿乃子が、探偵の祝左右馬(いわいそうま)と出会い、彼の助手として、いくつかの事件に関わることになる…というわけで、つまりミステリー、推理ものです。
ミステリーではありますが、「嘘」を聞くことができるという特殊能力があるだけに、普通の推理ものとはまた違った独特の展開になっているのが面白いですね。
私もミステリーはけっこう好きで、シャーロック・ホームズのシリーズとか、クリスティとか、有栖川有栖とか、金田一少年の事件簿とか読んできましたが、推理自体は得意ではないので、真相にうまくたどり着いたことはあまりありません。
それでもミステリーが好きなのは、謎解き自体よりは、そこに現れる人間模様とか心理ドラマとかが好きだからなんでしょうね…
嘘が聞こえるという自らの特殊な力のために周囲から気味悪がられ疎まれ、また自分でも自分を疎むようになり、自己を肯定できなくなっていた鹿乃子が、左右馬やその仲間たちと出会って少しずつ前向きになっていく辺りはとても良かった…
良き理解者に出会えるということは、やはり人生では大事なことなんでしょうね。
それにしても馨(かおる)さんめっちゃいい人やなぁ…
途中に出てくる人々の人間模様もまた良いですが、個人的にはやはり史郎さんと武上(たけがみ)の話が印象深いというか、身につまされますね。
そうだよな…人に言われたことにもとづいて動いているだけでは、結局人に振り回されるだけの人生で終わってしまう…
月並みな言い方ではありますが、自分の答えは自分で見つけなければならないってことですね…分かるわ。人には当てはまることでも、自分には当てはまらなかったりしますからねぇ。
あと昭和初期のころのレトロモダンな雰囲気もまた良いです。街並みとか服装とか。
↑こういう蓄音機とか出てきます。
ゴールデンカムイとかもそうですけど、最近こういう明治~昭和初期ごろの時代が物語の舞台になっているのは、この辺の時代がある種の「イメージ」を伴った時代区分として、もはや過去の歴史の一ページになっているということなんでしょうかねぇ。
あと恋愛要素も控えめながらありますが、控えめなだけにたまに出てくると破壊力高いというか、ラスト辺りの「雪が降ってて寒いねぇ」とか言ってたシーンはめっちゃテンション上がりましたね。思わず机バンバンしちゃいましたよ、ええ。
あと何故か「ナンセンス先生」が妙に印象に残りました。全く、こんな感想文を書いてしまうとはナンセンスですねぇ…