empirestate’s blog

主に政治…というよりは政治「思想」について書いています。

高度プロフェッショナル制度について

高度プロフェッショナル制度(高プロ)についてはすでに多くの批判が出ていますが、日本弁護士連合会(日弁連)がその問題点を述べています。↓
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/booklet/data/kodo_professional_seido_pam_color.pdf






高プロは労働時間の上限規制がなくなり、残業代もなくなり、月200時間残業させても違法ではない(過労死ラインは月80時間)、過労死しても長時間労働を指導できない、24時間連日、休日休憩なしで働かせることも可能という、何ともすさまじい制度です。
↓(過労死ラインは2〜6ヶ月80時間、1ヶ月100時間)

当然ながら、過労死遺族会などはこの制度を、長時間労働や過労死を促進する制度だ、として非難しています。全労連などは「現代の奴隷制度」とまで言っています。それでも、経団連や政権はこの制度を成立させたいようです。


高プロには年収1075万以上が対象という年収要件がありますが、これは後から変わる危険性があり、経済団体は初めは年収400万以上を対象にしようとしていましたし、施行後の対象拡大も強く要求してきたと云います。

維新の会はすでに年収700万以上にするべきだと言っています。↓


ブラック企業被害対策弁護団hpより

佐々木亮弁護士はこの年収要件は絶対に下がると言っています。↓
https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20180330-00083362/

政権は今は「基準の引き下げは考えていない」と言っているようですが、後で考えが変わればそれが「あり得る」のだとしたら、制度的欠陥としか言いようがないでしょう。
アメリカでも残業代ゼロの制度が成立した後で対象拡大され、一部では年収300万円未満の人までその中に含まれ、また日本の派遣法も成立した後で対象が拡大されたことが知られています。

そもそも、年収1075万以上の人だったとしても、働き過ぎれば死ぬことには変わりありません。政権は年収1075万以上の人にはそんなに不利な状況にならないように企業と渡り合える力があるから大丈夫と言っているようですが、現在と将来の高所得者が皆そうだという保証があるわけではありませんし、そもそもそのような個人の「力」をあてにした制度というのは、要するに「自分でなんとかしろ」と言っているようなもので、何のために労働者を保護する法律があるのかということにもなるでしょう。

対象が拡大しても企業が配慮してくれてそんなに無茶な働かせ方はしないだろう、たとえ企業がそうしようとしても自分で何とか回避できるだろう、という考えもあるかもしれませんが、それは希望的観測であって、幸運をあてこんだ考えであるわけです。つまり、経営者側の善意と、労働者側の余裕のある境遇、という幸運をあてにしているわけですが、法律はそのような幸運をあてこんで作られるべきではないでしょう。
それに、たとえ経営者がたまたま親切で、無茶な運用はしないでくれたとしても、それは「本当は労働者を酷使しても合法だけど、お情けでそうしないでいてくれる」ということになるでしょう。つまり、もともとは労働者の「当然の権利」だったものが、経営者の「お恵み」になってしまうわけです。このような労働者の立場の悪化が、将来的にもっと深刻な問題を生み出すかもしれません。

ちなみに、過労死遺族や野党は廃案を訴えていますが、常々野党攻撃をしている人々の反応はこんな感じです。人の善意をあてにすることの危険性が分かりますね↓