日本の歴史は、教科書に乗っているような学問的な、客観的な立場から書かれたものもありますが、日本の歴史をいわば「主観的」に、「日本の古典から」学びたいなら何を読むべきか?
私は「日本書紀」を推します。
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長いので抄訳のものもあります
↓
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日本書紀は古事記とともに日本の最古の時代を描いたものですが、日本書紀は「正史」であり、当時の朝廷の公認の書物です。記録としても、日本書紀はそれに続いて続日本紀が書かれ、その中で前作である日本書紀の成立の次第が書かれており、その後の日本でも、日本書紀の講義が広く行われていた記録が残っています。
古事記はその前文によれば、太安万侶が天武天皇の命を受けて編纂したものだとされていますが、続日本紀には太安万侶の言行の記録もあるのに、彼が古事記を編纂したとは述べられていません。(また、太安万侶は日本書紀の編纂にも関わっている)
古事記以外で古事記について言及した記録は、古事記編纂から100年後の時代で、太安万侶の子孫による記録です。こうした不審な点があるため、古事記は偽書ではないかと言われていた時代もありました。現在では一般に偽書とはされていませんが、いずれにせよあまり広く受け入れられていた資料ではないと言えます。
そんなわけで、平田篤胤のような後世の国学者は、古事記に日本の本来の心が伝えられていると考えましたが、私としてはむしろ日本書紀ー続日本紀のラインのほうが、古い時代の日本のあり方を伝えているものだと思います。
内容からいうと、日本書紀の著しい特色の一つは、異伝を多く伝えているところです。
これは特に神代(神話時代の記述)に顕著ですが、本文を書いたあとに、「一書にいわく~~」「一書にいわく~~」という形で、それとは異なった伝承を伝えています。このため、神話も一つのパターンだけでなく、いくつか異なったパターンが伝えられています。
ここには風土記(日本各地の伝承を伝えたもの)ともいくらか並行記述が見られ、まだ統一されていなかった頃の、原初の日本を見る思いがします。
- 作者: 植垣節也
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また上に見たように、日本書紀は複数の資料(名が挙げられていたりいなかったりする)を参照して書かれており、その間のつじつまを合わせようとして、客観的な記述になるように気を使っている面も見られます。もちろん、朝廷にとって都合のいいように編集しているところも多いのですが、そこは注釈を見ながら読んでいくといいでしょう。
例えば、日本書紀は神功皇后を卑弥呼に比定しているので、この時代を基準にして外国の資料と年代を合わせているようです。しかし実際には神功皇后は卑弥呼の時代よりも前の人らしく、そのつじつまを合わせるためにその前に何人かの天皇の時代を差し挟んでいるようですが…
日本書紀が参照している資料の中には「魏史倭人伝」のように今に伝わるものもあれば、「百済本紀」や「天皇記」のように今には伝わっていないものもあります。こうした資料を集めて作っているという点で、古代史への興味をかきたてるものになっています。
続日本紀も良いです。私が読んだのは現代語訳がついてない版だったので読むのに少し苦労しましたが。続日本紀では異伝がなくなっており、文書作成の仕方が統一されてきた時代の流れを感じますね。
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ちなみに日本書紀は漢籍(中国古典)からの引用が多いので、平田篤胤のような国粋主義者はこれを不満に思っていたようですが、私としてはむしろそこに当時の時代状況を見るべきだろうと思います。まだ十分に統一されていなかった頃の日本では、漢籍が知識人階級の共通の教養で、それによって人々をまとめる意図があっただろうと思うからです。
個人的な感想を言うと、私は古事記を読んだ時は、天皇制と日本の成り立ちがこのようなものの上に成り立っているのだとしたら、それは到底受け入れがたいものだと思いましたが、日本書紀を読んだ時には、これなら一部修正すれば現代でも通用しそうだと思いました。私が天皇制と日本を肯定的に見れるようになったのは、日本書紀、続日本紀によるところが大きいと思います。
なので個人的には、日本書紀はおすすめの書籍です。