empirestate’s blog

主に政治…というよりは政治「思想」について書いています。あと読書感想文とか。

「野党は何でも反対」という言説

たまに、「野党は何でも反対している」「批判ばかりしている」と主張されることがあります。

しかし、これもまたよく言われることですが、「実際には何でも反対はしていない。政党にもよるが、立憲民主党は政府法案の8割程度には賛成しているし対案も出している」とも言われます。


利用規約があるのでリンクは載せられませんが、2021年10月14日の神戸新聞の記事によると、1月〜6月の第204回国会で成立した内閣提出法案62本のうち、会派別に見て、「共産」が反対したのは35本(56%)、「立憲民主党・無所属」が反対したのは16本(26%)、「国民民主党・無所属クラブ」が反対したのは7本(11%)となっています。

共産党は比較的反対が多いですが、それでも56%ですから「何でも反対」とまでは言えないように思います。
また立憲民主党の会派は26%、国民民主党の会派は11%ですからなおさらです。


また、立憲民主党の中谷 一馬が2019年7月13日のアゴ
https://agora-web.jp/archives/2040283.html
で書いているところによると、2017年11月に開会された第195回国会から2019年6月に閉会された第198回国会までの間で、

立憲民主党 会派は、政府提出法案に79.5% 賛成

国民民主党 会派は、政府提出法案に82.2% 賛成

最も賛成率が高かったのは、日本維新の会の86.8%

最も賛成率が低かったのが、日本共産党の53.4%


となっていて、神戸新聞の記事と同じような比率が見て取れます。こちらは反対率ではなく賛成率ですが。

ここからしても、「反対ばかり」とは言えないと思います。

また、上の記事で中谷一馬が言うところでは、立憲民主党は「批判ばかり」ではなく対案も出していて、第195回国会から第198回国会までの約一年半の間に104本の法律案を提出したけれど、政権与党は数が多すぎて審議する法案や内容も自分たちの都合で決められるので、都合の悪い法案は審議さえしてもらえないと書いています。彼の言うところでは、「野党議員のみで提出した法律案204本中、与党が議決に応じた数は、わずか7本(3.4%)」だと言います。


衆議院法制局の資料を見ても、第195回国会(平成29年11月1日~12月9日)での法案は8個あり、そのうち提出者に立憲民主党を含む法案は5個あります。しかしこれらはいずれも成立していません。ちなみに自民党公明党の提出は1つですがこれも成立していません。

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/housei/html/h-shuhou195.html


第196回国会(平成30年1月22日~7月22日)での法案は46個で、そのうち提出者に立憲を含むものは26個です。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/housei/html/h-shuhou196.html


第208回国会(令和4年1月17日~令和4年6月15日)での法案は61個で、そのうち提出者に立憲を含むものは33個です。

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/housei/html/h-shuhou208.html#about2


ここからしても、批判ばかり、反対ばかりとは言えないと思います。



また、自分としては、そもそも反対すること自体が悪いわけでもないと思います。

政党とは同じような政治思想を持った人々の集まりなわけですから、その思想に基づいて、それに合うものには賛成し、それに合わないものには反対しても何も不思議はないでしょう。
(共産党は比較的反対が多いですが、それは共産党が政府与党とそれだけ考えの違いが大きいからでしょう)

もちろん、その意見に第三者が賛同するかどうかは第三者の判断しだいですし、その意見が客観的に正しいかどうかもまた別の問題ですが、こうした意見を出すこと自体は批判されるようなことではないはずです。
もしそうでなければ、複数政党制などやめてソ連や中国のような一党支配にすればいいということになりますし、そもそも議論などやめて誰かが独断で決めればいいということになるでしょう。

中谷一馬は前述の記事で、反対した法案にも反対するだけの理由があったので、カジノ法案に反対したのは成長戦略や依存症対策が疑問だらけだったからで、働き方改革関連法案に反対したのは捏造されたデータをもとに審議が行われてきたからだ、これらには世論調査でも国民の多くが疑問を持ち、反対していたことだ等と述べています。


辞書でも、野党の役割の1つに批判が挙げられています。

https://kotobank.jp/word/%E9%87%8E%E5%85%9A-143821

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
野党
やとう
政党政治において政権党と対決し,次期政権政党として行動するが,現在のところ権力の外にある政党。次期政権を準備する野党の存在が,複数政党制の成熟には特に重要となる。おもに権力批判機能と政権・政策代案提出機能を演じる。



ところで、野党は実際には反対ばかりではないのなら、なぜ反対ばかりしているかのようなイメージができているのかというのも疑問です。

その理由には、報道で与野党が対立している場面が特に報道されがちだからというのもあるでしょうが、日本では戦後ほとんどの期間、自民党が多数派で政権与党であり続けてきたので、他の政党はそれだけ常に野党であり続けることになり、批判しかできない状態にあり続けてきたからでもあろうと思います。

もっとも、それも野党の政権担当能力が不足しているからだというのはあるでしょうが、この状態でさらに「批判は悪いことだ」という風潮が広まれば、さらに批判しかできない立場にとどまり続けることになり、あるいは批判さえできなくなって、中国で中国共産党に従属している名目的な野党と同じような存在になってしまうのではないかと思います。(中国にも一応共産党以外の政党はあるがそれらは名目的な存在にすぎないと言われます)
そうなれば、日本はただでさえ事実上の一党支配に近い状態なのに、さらにその傾向が加速するだろうと思います。