empirestate’s blog

主に政治…というよりは政治「思想」について書いています。

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Twitterではたぶんけっこう有名人な、鋭い政治批評で知られる「異邦人」さんのブログ。
近ごろ始めたみたいです。
https://www.samizdat1917.com/

ブログタイトルの「サミズダート」は、出版が検閲されていたソ連で、気骨ある人々が反政府的書物を地下出版していた行為を指すとか。
そんな歴史があったんですねー



ネトウヨ大百科」
http://blog.livedoor.jp/ntuy_hyakka/

人はなぜネトウヨ(ネット上で右翼的な言動をする人)になるのか?その心理状態は?

ネトウヨだった人の体験談などもあって、心理分析が面白い。政治というよりは心理学のブログ。こちらも比較的最近のものです。

沖縄の辺野古基地問題

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沖縄県知事選挙が9月30日に行われますが、主な争点になっているのはやはり辺野古基地問題です。

いま普天間にある米軍基地を辺野古に移設しようというのが政府の方針ですが、辺野古に新基地を作ることには多くの人が反対しています。

県知事候補の一人、玉城デニー氏は辺野古基地建設には明確に反対しています。一方、辺野古基地建設を進める政権が後押しする佐喜真敦氏は、辺野古については明言を避けているようですが、政権から後押しされていることからしても、デニー氏の主張に対して明言を避けていることからしても、まず辺野古基地賛成派だと言っていいでしょう。

なお、沖縄には他にも米軍基地が沢山ありますが、デニー氏は米軍基地を全て無くせと言ってるわけではないので、まずは「辺野古」の是非が焦点だと思います。

沖縄県庁も、沖縄は辺野古新基地建設には反対しているが、日米安全保障体制自体に反対しているわけではない、ただ我が国では基地の機能や効果、負担のあり方などの議論が十分ではなかった、等としています。(沖縄県庁の米軍基地Q&Aより)
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そんなわけで、辺野古新基地建設に賛成か反対かが主な争点の一つですが、この点で何が問題なのか調べてみました。

資料にしたのはこちら

沖縄県http://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/tyosa/qanda.html
とその発行した米軍基地Q&A
http://dc-office.org/wp-content/uploads/2017/04/QA20170406.pdf

琉球新報(沖縄の基地の成り立ち 知っておきたい3つのこと―2017年06月22日 )
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-519512.html

沖縄タイムス(普天間飛行場問題―上中下、2018年5月12~14日)これは上→
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/250181

オール沖縄会議
http://all-okinawa.jp/


で、沖縄の米軍基地の経緯ですが、沖縄の基地は太平洋戦争をきっかけにしてできたものです。
基地には元々日本軍の基地だったものを米軍が流用したもの(嘉手納など)と、元々人が住んでいた民有地を米軍が強制接収して作られたもの(普天間など)があります。
沖縄には民有地に建てられた基地が多く、日本本土の米軍基地の87%が国有地なのに対して、沖縄では23%が国有地、残りの77%が民有地と公有地(地方公共団体の土地)です。これは、本土の米軍基地が日本軍の基地を流用したものが多いのに対して、沖縄では強制接収された土地に建てられたものが多いことによります。
特に嘉手納より南の基地は民有地が88.4%で、普天間もここに含まれます。
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さらに、かつては本土にも米軍基地が多くありましたが、本土で反基地運動が高まったために、1950~60年代に、本土の基地のほとんどが沖縄に移動することになりました。そのため沖縄に米軍基地が集中(全国の基地の74%)しています。(沖縄が本土復帰したのは1972年)

つまり、沖縄に米軍基地が多いのは、本土の基地を肩代わりさせられたからという面もあるわけです。
ですから、本土の人はもし基地容認の立場を取るにしても、少なくとも基地のことで沖縄を悪く言うべきではないと思います。沖縄は本土の負担を肩代わりさせられているわけですから。
そもそも沖縄で地上戦が行われたのも、本土を守るためでしたし。

しかし沖縄では基地による弊害が色々あるので、日米両政府に対して、可能な限り基地を減らしてくれるように要請していました。
1996年に日米両政府は話し合って、普天間を始めとする11の基地について、日本に返還することが約束されました。2006年には約8000人(後に9000人)の海兵隊を国外に移し、嘉手納飛行場より南(普天間もここに含まれる)の6ヶ所の基地の返還が約束され、2013年にはこれを実行に移す計画が立てられましたが、6ヶ所の基地の大部分は沖縄県内の他の基地に機能を移し、そのほとんどが2022年以降に返還されるとされています。
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(沖縄県庁より)http://www.pref.okinawa.jp/site/kodomo/sugata/begunkichi.html
(デニー氏も嘉手納以南の基地の返還を求めていますが、これにもとづくものだったんですね)


で、辺野古新基地建設の是非ですが、私としては、もし普天間辺野古の基地が日本とアジア太平洋地域の安全保障のために不可欠なものであり、なおかつそれが地理的な条件からいって「辺野古」でなければならないのだとしたら、辺野古に基地を作るのもやむなしであると思います。

しかしながら、私はこれには疑問があります。
というのは、まず普天間については、前述のように、沖縄の人々は可能な限り基地を減らしてくれるように要請してきており、1996年に日米両政府が話し合って、普天間を含む11の基地の返還が決まっています。日米両政府は人々の要請を鵜呑みにしたわけではなく、話し合って返還を決めたわけですから、普天間は「可能な限り」に含まれていたもので、不可欠と見なされていたわけではなかったはずです。現に今それを移設しようとしているわけですし。(嘉手納以南の他の基地についても、そのほとんどが2022年以降に返還される約束なのだとしたら、それは不可欠とは見なされていないのでしょう)

また、移設先も最初から辺野古ありきで決まっていたわけではなく、こちらの東洋経済オンライン2015年5月12日→https://toyokeizai.net/articles/-/69279?display=b
では、

普天間の移転先が辺野古しかないのか、考えるチャンスは幾度もあった。

最も合理的な移設案は、米空軍の嘉手納基地との統合だったが、「トラブルの多い海兵隊を空軍が嫌がったため立ち消えとなった」(中堅幹部)。民主党の鳩山政権下で浮上した鹿児島県の徳之島などは、地元の反対で実現しなかった。

と云われています。
嘉手納では米軍内部での問題、鹿児島では日本国内の問題で移設が頓挫していますが、候補としては辺野古ありきではなかったわけです。
さらにいえば、嘉手納は沖縄県内ですが、鹿児島は九州であって、これは地理的に沖縄でなければならないとは限らないということになるのではないでしょうか?同じ記事ではこうも云われています。

専門家の間では「普天間飛行場も歩兵部隊も、辺野古より佐世保(長崎県)に近い自衛隊基地などへ移転したほうが、よほど効率的に運用できる」(軍事ジャーナリスト田岡俊次)との声もある。

宜野湾市では2009年に、米本土、ハワイ、グアムへの分散移転を求めています。
さらにいえば、米軍も辺野古にこだわっているわけではなく、

安倍政権で基地問題を担当する中堅幹部は言う。

「米軍は公の場でこそ日本政府に合わせてはくれますが、『普天間移設は日本の国内問題で、私たちの責任ではない。約束したのだから、しっかりやって下さい』という、完全に距離を置いた態度です」

とのことです。

また普天間辺野古の基地は海兵隊の基地ですが、この記事では海兵隊が他国の攻撃に対する抑止力になっているのかどうかも疑問符がつけられています。もっとも、文中の元防衛相の人の言葉からすれば、海兵隊自体には意味があると思いますが、普天間辺野古については、それが地理的に「辺野古」でなければならないとは、私は思いません。
私としては、嘉手納か本土の他の基地のように、すでに基地があるところに移すほうが良いだろうと思います。

なお沖縄県庁の辺野古埋め立て承認撤回の文書では、普天間の部隊について、「普天間飛行場に駐留している部隊の沖縄駐留の必然性は認められないものであって、移駐先が沖縄県内であることに必然性は認められない」と主張しています。(4p、25p目)
http://www.pref.okinawa.lg.jp/site/chijiko/henoko/documents/180831torikeshitsuuchisho.pdf
さらにここでは、辺野古の土地の地質、地形には当初想定されていなかった問題(地盤が非常に軟らかいなど)があり基地に適していないと言われており、そのため普天間の返還条件を満たせず、たとえ辺野古に基地を作っても普天間は返還されないと述べられています。

2016年には、海の埋め立てではない陸上への移設案についても、沖縄タイムスに掲載されました。(陸上移設案自体は96年からあるとのこと)
https://www.businessinsider.jp/post-19525

その沖縄タイムスの記事
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/67348

そういうわけですから、私としては今のところ、「辺野古しかない」とは思いません。

そもそも、沖縄を日本として防衛するのなら、米軍に頼るよりは自衛隊がやるべきだろうと思います。もしそのために必要であるなら、自衛隊を増強することも、私は不当だとは思いません。
とはいえ私は、日米同盟を破棄するべきだとか、米軍基地を全て無くすべきだとかは思いません。それはやはり必要なものでもあるでしょうし。自衛隊の能力の及ばないところを米軍が補ってくれるなら、それが良いと思います。

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ただ、これも基地問題の一つですが、米兵の犯罪を日本国内の法で裁けなかったり、米軍が事故を起こしても日本側は捜査できないといった、不平等な日米地位協定は改定するべきだと思います。日本と同じく地位協定があるドイツや韓国ではすでに改定されていると云います。(米軍基地Q&Aより)
対等な立場であってこそ、日米同盟も健全な同盟になるでしょう。なお地位協定については、デニー氏も佐喜真氏も改定を主張しており、党派を越えた主張になっています。


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一方、経済については、米軍基地Q&Aによると、沖縄の経済は基地に依存しているわけではなく、2014年(平成26)では県民総所得に占める基地関連収入の割合は5.7%です。(1980年(昭和55)の時点でも7.1%)
むしろ、すでに基地が返還された土地では、返還後の跡地の利用による直接経済効果は返還前の約28倍、雇用者数は約72倍という試算になっています。
今後返還が見込まれる土地についても、直接経済効果と誘発雇用者数は約18倍が見込まれるなど、むしろ米軍基地が沖縄経済を阻害する大きな要因になっていると云われています。(米軍基地Q&Aより)
オール沖縄会議によると、返還された土地にできた商業施設からはすでに数十倍~数百倍の経済効果が出ていると云います。


安全保障には確かに軍事も必要でしょうが、ただ軍事だけを固めていればいいというわけではなく、外交や経済などで容易に攻められない体制を作っておくことも必要なはずです。(ソ連も軍事は強かったものの経済破綻して崩壊しましたしね)

また辺野古の海を埋め立てると、サンゴ礁ジュゴン、それに新種の生物を含んでいるかも知れない自然の生態系を壊すことにもなります。
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辺野古に新基地を作れば、沖縄は今後もずっと長く、基地と共にある古い沖縄ということになるでしょうが、基地を減らして新しい時代が開ければ、沖縄は経済成長して、中国における香港やマカオのような存在になれるかもしれません。そうなれば、日本全体にとっても良いことだと思います。

そんなわけで、私はデニー氏を応援します。沖縄県民ではないので、投票はできませんが。

デニー氏の選挙関連サイト

http://tamakidenny2018.com/

https://hiyamikachiumanchu.com/seisaku/

男尊女卑とミソジニー

右翼は、右翼のイデオロギーと共に男尊女卑やミソジニー(女性嫌悪、女性蔑視)の傾向を持っている場合が多いように思います。
(なお女尊男卑や男性嫌悪(ミサンドリー)というものもありますが、私にはあまり身近ではないので、ここでは取り上げません)

ファシズムの初期兆候にも「性差別の横行」が挙げられています。
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で、その理由は何かと考えてみると、以前の記事でも書きましたが、それはこうした右翼思想がアイデンティティに結びついていることから来ていると思います。
(以前の記事→http://empirestate.hatenablog.com/entry/20180614/1528969699?_ga=2.114743375.917430249.1536204627-1688256755.1532434600)
右翼の思想は単なる政治思想にとどまらず、人にアイデンティティを提供するものである、つまり、自分のルーツは何で、自分はどういう存在であるのか、自分の属する集団は何であり、「敵」は誰で、「味方」は誰であるか、果たすべき自分の役割は何であるか、どのように生きていくべきか、といった思考の枠組みを提供するものであり、それが人にアイデンティティを与えるので、アイデンティティが不安定な若年者や、自己評価が低く自分に自信が持てない人を引き付ける力を持っているのだと思います。

そして、性別やその性別に期待される役割(ジェンダージェンダーロール)は、人のアイデンティティを形成する上で重要な一角を占めているので、右翼思想に傾倒する人(男性の場合)は、そこに現れる「典型的な」男性像やその役割といったものに強く自己を同化させることになるので、「男らしさ」や「女らしさ」に対するこだわりが強くなり、その「伝統的」な観念からしばしば男尊女卑やミソジニーに走ることになるのだと思います。

そのため、右翼に限らず、宗教的原理主義者のようにイデオロギーに傾倒する人にもしばしばこうした傾向があるように思います。


とはいえ、これはただ伝統的な観念だけによって起こるというものではなく、そうした男尊女卑やミソジニーの思想に傾倒する人の、もともとのアイデンティティの不安定さや自己評価の低さから来ている面も大きいと思います。
つまり、そこに自らのアイデンティティをかけている人は、自己の不安定さや自己評価の低さを補うために、過剰にこうした価値観に入れ込むことになり、それに少しでも反対されると、自己を守るために強い拒否反応を示すことになるので、こうして男尊女卑やミソジニーが普通以上に強まることになるからです。


私事ですが、私もかつては男尊女卑やミソジニーの思想に傾いていた時期がありました。
しかしそれは、本当に女性嫌いだったからというよりは、自らの精神を安定させるためにこそそうしていたのであって、自分でもそのことを自覚していました。
私は若年期からアイデンティティが不安定で、精神と神経の状態もあまり健康ではありませんでした。そして自分が、自分が思う、また世間が求めるような男性像にかなっていないことに負い目を感じてもいたので、少しでも自分の精神を安定させるため、また自分を自分の思うアイデンティティの枠内にとどめておくために、男尊女卑やミソジニーの思想を意図的に取り入れていました。
右翼思想にこそ傾倒しなかったものの、少し条件が違っていれば間違いなく右翼になっていたと思います。
(またこの頃には、女性のことを、自らの精神的な安定を脅かす存在のように思っていた覚えもあります)

そのあと、色々な経験を重ねて、精神状態が比較的落ち着くようになっていき、またジェンダーセクシュアリティについての理解が深まったことで、どうやら自分もマイノリティの一種らしいということが分かってきて、自分のアイデンティティもようやく確立していきました。
それに伴って、男尊女卑やミソジニーも、もともと心から賛同していたわけではないので、あっさり捨てることになりました。
そして、今までは自分の精神の安定を図ることに手一杯で、気づかう余裕のなかった女性の立場についても、多少は配慮できるようになったと思います。

そんなわけで、まず自分の精神を安定させることが、極端な思想に走ることを防ぐために必要だと思います。