empirestate’s blog

主に政治…というよりは政治「思想」について書いています。

やっぱ農家って大変なんだな…「泥だらけのハニー」他2作

また読書感想文(漫画の)を書いていこうと思います。これも少し前に読んだものです。
(読書感想文自体は前から書きたいと思っていたものの、以前はリンクを貼れなかったので、紹介したいと思うものがけっこうたまってるんですよね。ご承知下さい)

f:id:empirestate:20181230111054p:plain

ところで、少年漫画に比べて少女漫画を読むメリットは何かと言うと、もちろん内容の好みの問題もありますが、私としては「巻数が少ない」ことを一つの理由として挙げておきたいです。
少年誌とか青年誌だと、みんなとは言いませんが、人気のある作品だと40巻とか50巻、場合によっては100巻以上続いてるものもありますし、連載期間もそれに比例してとても長いことがあり、途中から読もうと思うとなかなか大変なものがあります。

その点、雑誌のシステムの違いなのか知りませんが、少女漫画は15巻もいけば多いほうで、ものによっては2巻や3巻、1巻完結のものもあります。それに、短いものも必ずしも人気がないからというわけではないようですし。
そんなわけで、あまり時間が取れない人にもオススメできるんじゃないかと思いますね。


で、今回紹介するのも1巻完結のものです。
「泥だらけのハニー」

泥だらけのハニー (花とゆめCOMICS)

泥だらけのハニー (花とゆめCOMICS)

主人公は農家の娘で、三人姉妹の長女です。けっこう珍しい設定かな?名前は米子(よねこ)。(それにしても、三人姉妹の名前が、種子«たねこ»、稲子«いねこ»、米子ってスゲーな…)
「嫁(い)き遅れ」と自分で言うくらいの年齢なのも珍しい気がします。

あの麦わら帽子に長靴の農家ファッション、ちゃんと理由があるんやな…

さて米子さんは農業を好きではありますが、最近は農家も後継者不足らしいですし、色々面倒な問題があるみたいですね。


「働いて食べる
人生それだけじゃ
駄目かしら」
(米子心の俳句?)


分かるわ…ただ生きていくだけではない。人間社会は色々面倒なものですからね…

そんなわけで、後継者不足の農家に、米子さんが昔都会にいた頃の知り合いが、期待の新人として来てくれます。しかし、彼にはとある秘密があって…?という話。

現代の農家が抱える問題とかが身近に感じられるかも知れません。米子さんみたいに真摯に仕事に向き合ってる人は私からすると尊敬しますね…


あと、同じ作者の作品ではこれもおすすめです。これも1巻完結。
ハウスキーパーマン」

ハウスキーパーマン (花とゆめCOMICS)

ハウスキーパーマン (花とゆめCOMICS)

元ヤンキーの主人公がハウスキーパー(雇われて掃除とか料理とかする人)として働きます。ついでにあなたのお宅のトラブルも片付けちゃいますよ!
って話。

こういうの家事メンって言うんでしたっけ?まぁ家事するだけで家事メンとか言うのは、逆に日本で男性が家事をする習慣がないことを浮き彫りにしている気もしますが、この主人公くらいの家事ガチ勢だとまさに「家事メン」という感じがしますね。圧力鍋で煮込むぞコルアアア!

これに載ってる排水溝のぬめり取りのテクニック、使ってる人も多いのでは?(私もやってます)



あと、主人公が農家の娘という設定つながりで言うと、これも外せないですね。
「原始人彼氏」(全3巻)

原始人彼氏 1 (花とゆめコミックス)

原始人彼氏 1 (花とゆめコミックス)

このタイトルと表紙だけでインパクトがありますが、まさか本当に原始人が彼氏になるわけじゃないだろ…と思っていたら、わりとガチだったという、なかなか斜め上にぶっ飛んだ作品です。
まぁさすがに原始人のままってわけじゃなくて、一応進化?みたいなことはあるんですが、それにしても最初はガチですからね…色々とすごい。
昔、「1万年と2000年前から愛してる~」って歌がありましたが、1万年どころじゃない、250万年前から愛してる!って、どんだけスペクタクルだよ…

でも何だかんだで、最後はけっこう感動しました。人類愛が感じられるような気がします。

あと、劇中劇?の「農業戦士 イネカル☆おこめ」ってタイトルが素晴らしいと思いました。

嘘解きレトリック

今回も読書感想文を書いていきます。また少女漫画ですが、今回はこれです。

嘘解きレトリック(全10巻)

嘘解きレトリック 1 (花とゆめCOMICS)

嘘解きレトリック 1 (花とゆめCOMICS)

嘘解きレトリック コミック 1-10巻セット

嘘解きレトリック コミック 1-10巻セット

舞台は昭和初年の日本。(昭和初年とは、「昭和元年」のことではなく、昭和の最初の数年間のことらしい)
主人公の浦部鹿乃子(うらべかのこ)は、人が嘘をつくとその「音」が聞こえる(つまり、その人が嘘をついていることが分かる)特殊な力を持っています。

この力のために周囲から疎まれ、郷里を出て九十九屋町(つくもやちょう)という街にやってきた鹿乃子が、探偵の祝左右馬(いわいそうま)と出会い、彼の助手として、いくつかの事件に関わることになる…というわけで、つまりミステリー、推理ものです。

ミステリーではありますが、「嘘」を聞くことができるという特殊能力があるだけに、普通の推理ものとはまた違った独特の展開になっているのが面白いですね。


私もミステリーはけっこう好きで、シャーロック・ホームズのシリーズとか、クリスティとか、有栖川有栖とか、金田一少年の事件簿とか読んできましたが、推理自体は得意ではないので、真相にうまくたどり着いたことはあまりありません。
それでもミステリーが好きなのは、謎解き自体よりは、そこに現れる人間模様とか心理ドラマとかが好きだからなんでしょうね…


嘘が聞こえるという自らの特殊な力のために周囲から気味悪がられ疎まれ、また自分でも自分を疎むようになり、自己を肯定できなくなっていた鹿乃子が、左右馬やその仲間たちと出会って少しずつ前向きになっていく辺りはとても良かった…
良き理解者に出会えるということは、やはり人生では大事なことなんでしょうね。

それにしても馨(かおる)さんめっちゃいい人やなぁ…


途中に出てくる人々の人間模様もまた良いですが、個人的にはやはり史郎さんと武上(たけがみ)の話が印象深いというか、身につまされますね。

そうだよな…人に言われたことにもとづいて動いているだけでは、結局人に振り回されるだけの人生で終わってしまう…
月並みな言い方ではありますが、自分の答えは自分で見つけなければならないってことですね…分かるわ。人には当てはまることでも、自分には当てはまらなかったりしますからねぇ。


あと昭和初期のころのレトロモダンな雰囲気もまた良いです。街並みとか服装とか。
f:id:empirestate:20181213234057p:plain
↑こういう蓄音機とか出てきます。

ゴールデンカムイとかもそうですけど、最近こういう明治~昭和初期ごろの時代が物語の舞台になっているのは、この辺の時代がある種の「イメージ」を伴った時代区分として、もはや過去の歴史の一ページになっているということなんでしょうかねぇ。


あと恋愛要素も控えめながらありますが、控えめなだけにたまに出てくると破壊力高いというか、ラスト辺りの「雪が降ってて寒いねぇ」とか言ってたシーンはめっちゃテンション上がりましたね。思わず机バンバンしちゃいましたよ、ええ。

あと何故か「ナンセンス先生」が妙に印象に残りました。全く、こんな感想文を書いてしまうとはナンセンスですねぇ…

ペルセポリス

また読書感想文を書こうと思います。これもちょっと前に読んだ漫画なので記憶が不確かなところがありますが…

今回は「ペルセポリス」です。

ペルセポリスI イランの少女マルジ

ペルセポリスI イランの少女マルジ

ペルセポリスII マルジ、故郷に帰る

ペルセポリスII マルジ、故郷に帰る

この作品はイラン出身でフランス在住の漫画家マルジャン・サトラピ氏が自分の半生を描いた自伝的な作品です。日本での発売は2005年。

私は、作者(以下、マルジ)のイランでの少女時代の話が印象的でした。
色々環境は違いますが、子供時代の話は何か自分が子供の頃を思い出させるようなところが多くて親近感が持てます。何というか、ちびまる子ちゃんを連想させるものがありました。

とはいえその頃のイランは政治的には不安定な時期です。マルジの幼少期はイランはまだ帝政(パフラヴィー朝)で、反体制派が弾圧され秘密警察に惨殺されてしまうような時代です。

その後イスラム革命が起きて帝政は倒れますが、これで世の中が良くなるかと思いきや、新たな体制は宗教的原理主義の体制であり、ベールをかぶるように強要されたり、酒を飲むことが禁じられて酒を隠さなければならなくなったり、西洋の文化が弾圧されたりして自由が失われていきます。この体制下でもやはり反体制派の人が暗殺されてますしね…

マルジの父親(親戚だったかも?)がうなだれて、「(世の中は)すぐよくなるさ…」と言っていたシーンが印象的でした。

それにしても、マイケル・ジャクソンのバッチを見とがめて、怒って補導しようとしてたおばさんが、厳しい顔しながらも結局見逃してくれたらしいのはちょっと慈悲を感じましたね…

その後、海外に留学して(記憶ではフランスに行ったのかと思ってましたが、先程調べてみたらオーストリアのフランス語学科だったらしい)、またイランに帰ってきてから、またイランを離れてフランスに行くことになります。この辺にはわりとサラッと描いてありますが、本人には色々と確執があっただろうな…と思わせるところがありましたね。でかいネズミ怖い…


個人的に印象的だったのは、マルジ(と家族)の国家観とか民族性とかの認識でした。


「国」「政治体制」「民族」「宗教」のような、ともすれば日本では一体のものとして認識されがち(と思われる)な諸要素が、実際にはあくまでも別々の要素なのであるということを再認識させられます。

マルジはいわゆる「リベラル」な考え方をしていて、イランの政治体制にも宗教にも批判的ですし、若い頃は隠れてアメリカの音楽を聴いていたりもしますが、しかし自らがイラン人であることに誇りと愛着を持っており、留学先で差別されたときには毅然と対応しています。

「お前ら黙れ!私はイラン人だし、それが誇りだ!!」

うーんかっこいい…

私はこれを読んだ当時、我が身を顧みた記憶があります。私にはこれほど確かな民族意識があるだろうか?多分ないだろうな…
いや、そもそも私は日本人ではあるが、その「日本人である」とはどういうことか…?

伝統的に、日本の右派は天皇制を支持する傾向があり、それによって自らと日本国を規定するような傾向もあります。
しかし、「天皇を戴く国」というのはあくまでも一つの「政治体制」であって、自らの民族的なルーツではないわけです。現代では「日本国籍」を持っていることが「日本人」であることの法的な根拠ですが、それも言ってみれば一つの「体制」による保証であって、民族的なルーツとは別です。

では「民族的に」日本人であるとはどういうことか?神道や仏教の徒であればそうなのでしょうか?しかしそれでは、キリスト教徒やイスラム教徒の日本人は日本人ではないのでしょうか?そんなことはありませんが、では日本人を「日本人」としているのは何でしょうか…?

日本語を話すことでしょうか?しかし、海外の日系人でもし日本語を話せない人がいたとしても、その人が民族的に日系人であることには変わりないでしょう。
あるいは「血統」として日本人であるということでしょうか?しかし歴史をさかのぼれば、日本人にも複数のルーツがあって血統などはまちまちなものですし、では日本人であるとはどういうことか…そんな、民族性とアイデンティティーの関連性を考えさせる作品でもありました。

それと印象的だったのは家族の絆の強さでしたね…。政治体制が不安定だからこそ、家族の結び付きが強いのでしょうか。その辺は中国の事情とも似ている気がしました。