empirestate’s blog

主に政治…というよりは政治「思想」について書いています。

「命も大事だけど経済も大事」という言説

すごく今さらですが、コロナ禍の初期のころ、感染症対策のために経済活動を制限することに反対する意見が出る中で、「命も大事だけど経済も大事」と言われたり、「命か、経済か(どちらを優先するか)」という問いが立てられたりした覚えがあります。

しかし自分としては、これらはあまり正確な物言いではないと思います。

というのは、この「命も大事だけど経済も大事」という意見を言っていた人々の間では、「経済活動を止めるとそのために人々は仕事を失って暮らしていけなくなり、自殺や餓死に追い込まれることになる。だからコロナ対策だけでなく経済も回さないといけない」といった主張がしばしば見られたように思うからです。

しかし、仕事を失って死ぬことになるのを防ぐために経済を回そうというなら、それは結局命を守るためにやっていることなのであり、「命を守る」ということ自体は共通の目的であって、ただその「方法」として、防疫(コロナ対策)を重視するか、経済活動を重視するかという違いがあるのだというべきでしょう。(この場合は単に命だけを守るというより、命を含めた人々の生活を守ると言うべきでしょうが)

もっとも、ある人が自分の命を犠牲にしてでも経済を回そうとしているなら、その人は「命か、経済か」を天秤にかけて経済のほうを優先していると言えるでしょうが、多分そういう人はあまり多くはいないでしょう。

ですから、「命も大事だけど経済も大事」とか「命か、経済か」というよりは、「防疫も大事だけど経済も大事」「防疫か、経済か」というほうが正確だと思います。

そして、この「防疫も大事だけど経済も大事」という点について言えば、実際それらはどちらも大事なのであって、ただその時の感染状況や経済状況によってどちらを重視するかは変わってくるものだと思います。

もっとも、台湾のように早くから感染を抑え込んだ国が経済的にも成長しているのを見れば、防疫を重視したほうが結果的には経済も回っていただろうと思いますが、初期のころに感染を抑え込んだ国とすでに感染が広がっている国とではまたやり方も違ってくるかも知れませんが。

news.yahoo.co.jp

“台湾の2020年の実質域内総生産(GDP、速報値)成長率は前年比2.98%となり、中国の2.3%成長を上回った。台湾の成長率が中国を上回るのは1991年以降約30年で初めて。新型コロナウイルス感染症の域内抑え込みが奏功し、輸出や投資などが伸びた。”