empirestate’s blog

主に政治…というよりは政治「思想」について書いています。

日本人は「新自由主義を選んだ」のか?

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今年10/31の衆院選では、自民党立憲民主党共産党が共に議席を減らしたのに対して、維新の会は4倍近く増やす躍進となりました。(公明党、国民民主党、れいわ新選組は微増)

この結果については色々と分析がありますが、一つ目についたものに「新自由主義の勝利」だというものがありました。

新自由主義とは自由市場を推し進めて政府による規制を撤廃緩和して、福祉の削減、自己責任、公的部門の民営化などを主張するものだと云われます。その結果貧富の格差が広がり貧困層が増えるなどいわゆる「弱肉強食」の社会を作ってきたと批判されてもいますが、日本だと正社員が減って非正規雇用派遣社員が増えたことなどがそれだと言われることが多いです。(日本もアメリカなどに比べれば格差は小さいほうではありますが、過去の日本と比べれば広がっています)


従来、自民党はこの方向で政策を進めてきたために格差が拡大したと言われてきましたが、新たな総裁になった岸田首相は新自由主義を見直し分配を進めると主張していました。選挙期間中には次第にトーンダウンしていったものの、従来とは違うという立ち位置を標榜してはいました。
共闘していた野党の立憲民主党共産党社民党、れいわもやはり自民党以上に格差の解消や分配を主張していましたし、共闘とは距離を取っていた国民民主党もそうだったと云われます。

しかし、その岸田自民と立憲、共産は共に議席を減らし、維新が躍進したことで、つまりは「有権者新自由主義を選んだのだ」と評価されています。もちろん人々が主観的にそう思って投票したかは分かりませんが、経済政策としては、結果だけを見れば新自由主義の躍進だというわけです。

https://www.newsweekjapan.jp/fujisaki/2021/11/post-24.php

“…こうした中で、日本維新の会は唯一はっきりと新自由主義政策を主張していたといえよう。新自由主義者として知られる人材派遣会社パソナ竹中平蔵会長と結びつき、社会保障としては弱者切り捨てに近いベーシックインカムを主張。規制緩和と民営化で「小さな政府」を実現し、「経済成長」のための競争社会をつくろうとしていた。ある議員は、「正社員」は「既得権」だと明確に言っていた。これはまさしく竹中平蔵の持論でもあり、雇用の不安定化を進めるということだろう。このような路線が、多くの有権者に支持されたということなのだ。”

“(岸田自民党も)立憲民主党共産党社民党、れいわ、そして国民民主党も、それぞれ自民党以上の分配政策を打ち出していた。給付金や学費軽減、教育機関への積極投資、減税などだ。しかし、有権者にはそのどれもが響かなかった、響いたのは維新のコストカット・弱肉強食路線だったのだ。

もちろん日本維新の会は、依然として「野党」のままだ。しかし、もし維新が自身の政策を実行できたとするなら、率直にいえば、富裕層や有能な人間にとっては利益があるといえるだろう。他方で多くの市民にとっては、それは生活の質を改善するものではなく、弱者やマイノリティにとっては今まで通り、誰の手も差し伸べられない政治となる。弱者やマイノリティに手を差し伸べようと訴えた政党は敗北したのだから。”

(Newsweek)


とはいえ、これが見出しにもあるように「日本人」の選択なのかといえばそれも怪しい話で、今回の衆院選は過去3番目に投票率が低い(55.93%)選挙だったとも言われています。

で、今回はいつものように「選挙に行こう」「投票率を上げよう」というキャンペーンが行われていたわけですが、実はこうしたキャンペーンは一部の人にしか届いていないらしく、日本では政治に関わる人々というのは、傾向としていえば「社会的経済的に恵まれていて、高学歴な人」だという分析があります。(また、年齢が高く、男性であるほうがこの傾向が高い)

一方で、比較的学歴が低く、日々の生活が苦しい人ほど政治に関わらず、選挙に行っていないという傾向があると云います。

news.yahoo.co.jp

“…つまり、政治参加に消極的なのは、中高卒などの非大卒層である。

実際、明るい選挙推進協会が全国の有権者3,150人を対象に2017年の衆院選後の2018年1月に実施した郵送法による世論調査によると、18〜20歳代で大学・大学院卒で「投票に行った」割合は62.5%なのに対し、中学・高校卒は43.9%と、同じ年代で20ポイント近くも差がついている

…一般的に、非大卒層の方が、雇用が不安定で、所得が低い傾向にある。つまり、政治的な関与を必要としていると言える。

しかし実際は、政策的な支援のニーズが高い層ほど、政治に参加していない、十分に政治状況を理解できていない状況にある。

…この層ほど、そもそも選挙があることを知らず、労働環境など日々の生活に不満を抱えている”


もっともこれは傾向なので必ずしもそうとは限りませんし、高学歴で社会的経済的に恵まれている人が分配を訴える政党に投票しているということもあるでしょうが、今までの経緯からいえば、そういう人々は分配よりは成長を訴える政党に投票し、その政策を支えているという傾向のほうが高いだろうと思われます。
なので、もしもこうした有権者が本当に「新自由主義を選んだ」のであれば、これからも格差の拡大は続き、富める者はさらに富み、貧しい者はさらに貧しくなるということになるだろうと思われます。


もちろん選挙の焦点は経済政策だけではないですが、こうした格差の拡大に歯止めをかけたいのであれば、分配を訴える政党のほうを支援して、自らが貧しくなるのを防ぎ、生活が不安定になることを防ぐ必要があると、いち労働者としては思います。
もっとも、特に野党の政策に実現性が乏しく詰めが甘いと言われているところが多いのも事実なのでそこは改善してほしいところですが。
news.yahoo.co.jp