empirestate’s blog

主に政治…というよりは政治「思想」について書いています。

改憲論

改憲について改めて言っておくと、私は9条だけを変えて自衛権を明記する案なら賛成できます。

それ以外の条項は内容にもよりますが基本的には変えるべきではないと思います。特に人権の保証は確保しないといけない。

以前の記事でも書きましたが、緊急事態条項については、自民党案の緊急事態条項(2018年案)は濫用の懸念が大きすぎるので反対です。他のメディアなどでも懸念されていましたが。*1

仮に自民党案のように内閣が国会の立法を待たずに法律に代わる政令(緊急政令)を出せる緊急事態条項を作るなら、目的を立憲主義体制と国民の権利自由を守るためと明確にして、発動の条件と対象を厳密に規定して、あとで国会の承認が得られなければ失効するという条件くらいはつけるべきだと思います。国会だけでは足りなければ裁判所の違憲審査があってもいいし、緊急時でも制限されない権利(思想良心の自由、信教の自由、言論の自由など)を規定してもいいでしょう。

憲法ではない個別の法律の中にはすでに緊急政令の規定がある法律がありますが*2自民党案の緊急事態条項とは違って、そこではこうした濫用を防ぐための条件が備わっていますし、緊急事態条項の創設に反対する政党や弁護士会もこうした法律を肯定しています。

もっとも、国民民主党案の緊急事態条項は、最近の報道だと議員の任期の延長くらいしか言及されていないので内容が分かりにくいですが、3月の時点では、上に述べたような濫用を防ぐための様々な条件を課すべきだと発言していたようなので、*3仮にこの考え方にもとづいて国民民主党改憲を主導するならまともな案ができるかも知れませんが、いかんせん国民民主党は数が少なすぎるのでそんな期待はできないでしょう。

ともかく、自民党案の緊急事態条項には反対です。


一方、9条のほうについて言うと、これも一部の界隈ではイメージ先行というか、今の条文だと何ができなくて、変えたら何ができるようになるのかという共通の理解が希薄であるように思えます。

9条の改憲については、よく「日本を戦争ができる国にさせない」とか「攻めてくる相手に無抵抗のままでいいのか」とかいうことが言われてきたように思います。
しかし、少なくとも従来の憲法解釈では個別的自衛権(自国単体を守る権利)は認められてきましたし、そのために自衛隊もあるわけですから、自国が攻撃された時に自衛のために戦うことを戦争と呼ぶなら、日本はもうすでに「戦争ができる国」ですし、別に無抵抗なわけではありません。なので、こうした物言いは実態から乖離しているように思えます。

とはいえ、なんの制限もなしに戦争できるわけではなく、やはり比較的厳しい制限がかかっているとは思います。

従来の解釈では、集団的自衛権は9条の範囲を越えるものとして認められてこなかったと言われます。だからこそ、解釈変更で集団的自衛権を認めた安保法制の時には、これが違憲だとしてけっこうな反対が起こり、今でも根強く続いているのでしょうが、私としては集団的自衛権には賛成なので、改憲して正式にそれを認めるべきだろうとは思います。

思えば、集団的自衛権自体には賛成でも、この時に正面から改憲を問わず、強引な解釈変更で乗り切ったことが、今に至るまで法の軽視のような形で尾を引いているのではないかというように思います。

それ以外には、アフガニスタン邦人救出をやった時に自衛隊を戦闘地域に送れなかったことが憲法の制約のためだと言われていたことがあったと記憶しています。もっとも、これは憲法の制約というより政府の事前の準備が足りていなかったからだとも言われていた気がしますが、もし憲法の制約のためなら、こういう場合でも活動しやすくなるかも知れません。

9条の1項については、侵略戦争の禁止であって自衛を禁じるものではないし、これは国際法の原則でもあり、同じ趣旨の条項は他国にも複数あるのでこれについてはそのまま保つべきだろうと思います。


もちろん、単に改憲して軍事力を増強すればそれで安全になるかと言ったら、そんなに単純なものではないでしょう。
よく言われるように他国の戦争に「巻き込まれる」リスクだって間違いなく上がるでしょうし、日本が軍拡すれば日本が仮想敵にしている国もそれを警戒して対抗して軍拡し、軍拡競争になったりかえって戦争の危険性が高まる、安全保障のジレンマに陥ることだって十分考えられます。軍拡競争になれば旧ソ連のように、経済が破綻して崩壊する可能性もあります。

なので、そこでもバランスを取る必要はあるでしょう。私としては基本的には従来通り戦争を防止するように外交努力を続け、それでもやむを得ない場合のために軍事力を持つ、いわゆる専守防衛の立場を保つべきだろうとは思います。素人なので現状なにがベストなのか確たることは言えませんが。

なので、仮に改憲するにしても、その際には内外に向けて「これはあくまでも防衛的な措置であって、他国への攻撃のつもりはない。もちろん過去の軍国主義時代や帝国時代に回帰するものではないし、その過去を正当化するものでもない」ぐらいの声明は出すべきだろうと思います。

とはいえ、近年の日本の政治情勢からすれば、こうした声明は国外どころか国内でさえ本気では受け止められないだろうとも思います。というのも、日本で熱心に改憲を進めてきた勢力が、このような思想を持っているとは思えないからです。

あとは、歴史修正主義軍国主義時代や過去の戦争を正当化するのもやめるべきだとも思います。これはもちろん政治的イデオロギーで歴史を修正するべきではないからでもありますが、安全保障の上でも、内外で余計な対立を生むものだと思います。まぁ国内の一部の人々が精神的に満足するというメリットはあるでしょうが、私には何のいいこともないですし。

*1:https://www.huffingtonpost.jp/2018/05/03/kinkyu-jitai-joukou_a_23426043/ ❝…以上のように、新73条の2には権力濫用の歯止めがみあたらず、2012年の自民党憲法改正草案や、戦前の大日本帝国憲法8条と見比べても、酷いと言わざるを得ない。近代立憲主義は、権力の暴走を防ぎ基本的人権を遵守するための英知だ。しかし、新73条の2は、内閣は暴走しないという前提に立っており、憲法の何たるかを誤解している恐れすら感じさせる。❞ (2018年05月03日 ハフポスト) 

*2:https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b183066.htm 答弁書(H25.5.7) 五について お尋ねの「緊急事態に際して、法律制定と同様の効果を閣議決定などで内閣が生じさせることができる法律」が具体的に何を意味するのか必ずしも明らかではないが、国会が閉会中又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置を待ついとまがないときに、内閣が必要な措置をとるため、政令を制定することができる旨規定している法律の規定は、次のとおりである。 災害対策基本法武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律新型インフルエンザ等対策特別措置法

*3:https://new-kokumin.jp/news/diet/2022_0331_1